2011年10月4日火曜日

消費税改正対応1-消費税関連科目の表示方法

消費税法改正対応(平成2441日以後に開始する課税期間から)のため、消費税関係の取扱いを整理しておく。
さしあたり、『消費税の会計処理について(中間報告)』(日本公認会計士協会 消費税の会計処理に関するプロジェクトチーム 平成元年1月18日)の中で個人的に大事だと思ったところの転記。


◆控除対象外消費税の性格
資産に係る控除対象消費税額の性格については、最終的な消費について負担したものと考え「当該資産の付随費用として取得原価を構成するもの」とみる説と控除できなくなった仮払金であるとの考え方等から「発生事業年度の期間費用」とみる説があるが、いずれがより適当であるかは、消費税法適用後の経過等を踏まえ、今後更に検討すべきものと考える。
◆消費前関連科目の表示方法
1.未払消費税
未払消費税は、「未払消費税」等その内容を示す適当な名称を付した科目で貸借対照表に表示する。ただし、その金額が重要でない場合は、未払金等に含めて表示することができる。
2.未収消費税
未収消費税は、「未収消費税」等その内容を示す適当な名称を付した科目で貸借対照表に表示する。ただし、その金額が重要でない場合は、未収金等に含めて表示することができる。
3.租税公課(消費税)
税抜方式の場合における控除対象外消費税又は税込方式の場合における納付すべき消費税額は、販売費及び一般管理費の「租税公課」に表示し、その金額が重要な場合は「消費税」等その内容を示す適当な名称を付した科目で表示する。
(注)販売費及び一般管理費として表示することが適当でない場合には、その金額を売上原価、営業外費用等に表示することができる。
4.雑収入(還付消費税)
税込方式における還付された消費税は営業外収益の「雑収入」等に表示し、その金額が重要な場合は「還付消費税」等その内容を示す適当な科目を付した科目で表示する。
(注)営業外収益の「雑収入」等として表示することが適当でない場合には、その金額を売上原価、販売費及び一般管理費から控除して表示することができる。
5.長期前払消費税
長期前払消費税は、「長期前払消費税」等の内容を示す適当な名称を付した科目で貸借対照表に表示する。ただし、その金額が重要でない場合は、投資その他の資産の「その他」に含めて表示することができる。

2011年9月20日火曜日

循環取引等不適切な会計処理への監査上の対応について

平成23年9月15日、日本公認会計士協会から『循環取引等不適切な会計処理への監査上の対応等について』(会長通牒平成23年第3号)と題する会長通牒が発出された。
以下はメモ。

【1.構成などのメモ】
全9ページ・5セクション建て。
題名からも当然であるが、文章のおよそ7割(大体6.5p/9p)が「4セクション目の監査手続実施上の留意事項」に充てられている。
4セクション目の中でも(1)リスクの評価、(3)残高等の確認は、それぞれ1p2pが割かれており、監査人にとって重要だというだけでなく、事業会社としても、ここを重点的に実施することが循環取引等の防止に効果的であり、また、経理部門としても説明責任を果たすことになるものと思われる。

【2.内容メモ】
以下は、印象に残った箇所のメモ書き

1.循環取引の特徴
・取引先は実在することが多い
・資金決済は実際に行われることが多い
・会計記録や証憑の偽造又は在庫等の保有資産の偽装は、徹底して行われることが多い

4.監査手続実施上の留意事項(8)異常性分析
回転分析や比率分析は、前期との比較等の短期間の分析では、それほど異常性が顕著には出ていない場合でも、中期的な趨勢を分析した場合には、異常性を認識できることもあるので、その点にも留意する。

4.監査手続実施上の留意事項(9)異常点への対応手続
① 会計システムと業務システムとの金額の整合性の確認
② 異常な会計伝票の有無の確認

2011年9月15日木曜日

四半期報告書の簡素化に関する注意点

先日、仰星監査法人の竹村純也氏のブログに「第2四半期では省略規定の復活に気をつけろ!」と題したエントリーがあった。

非常に参考になったので、以下で内容要約メモ。

【以下、内容要約メモ】
四半期報告書の簡素化についての注意点。
「第1四半期・第3四半期」と「第2四半期」では、省略規定が異なるため、直前四半期の四半期報告書を確認しながら当該四半期の四半期報告書を作るという実務が成立しなくなるという点。
特に第1→第2の場合は、必要な事項にモレが生じかねないため、注意が必要である。
また、四半期全体(第1・第2・第3)を通した当社(グループ)の省略等の方針を明らかにしておかないと第1と第3で省略の内容が違ったり、何を省略してよいか分からなくなったりしかねないという点。
これをうまく解決するためには、
①そもそもどのような省略規定があり、
②当社(グループ)は、どのような方針でそれを適用しているのかについて
③第1~第3四半期を通じて管理する
ような仕組みを持つことが必要である。

なお、竹村氏は、①~③を満たす資料(一覧表)を無料で提供しており、竹村氏のブログから仰星監査法人のHP経由でダウンロードすることができる(登録要)。
【参考】
P.S.バンブーブログ「第2四半期では省略規定の復活に気をつけろ!」
http://bambootakemura.blog.fc2.com/blog-entry-65.html

2011年9月1日木曜日

決算短信・四半期短信の開示時期

四半期短信・決算短信の開示時期等について再整理。

1.開示時期
(1)四半期短信:四半期決算の内容が定まった場合直ちに。
         ただし、四半期報告書の提出までには行うことが必要。
(2)決算短信:遅くとも期末後45日以内が適当、30日以内が望ましい。
        なお、期末後50日を超える場合は、所定の開示が必要。

2.集中緩和要請
(1)毎月末、毎週末、決算期末後45日目を避ける
(2)午後3時台のピークタイムを避け、午前中などの決算発表を。
   特に午後3時は最も集中するため、発表時間を1分以上前後。
なお、東証が定めている分間当たり上限件数を超えた場合には、別の日時を指定するようエラーメッセージが出る。

3.その他
有価証券報告書及び四半期報告書が法定期限までに提出されない又は提出できる見込みがない場合には、法定期限翌日に監理銘柄(確認中)に指定され、法定期限経過後1カ月以内に提出されない場合には、当該銘柄の上場が廃止される。

(参照記載)
『2人以上の公認会計士又は監査法人による監査証明府令第3条第1項の監査報告書又は四半期レビュー報告書(公認会計士又は監査法人に相当する者による監査証明に相当する証明に係る監査報告書又は四半期レビュー報告書を含む。)を添付した有価証券報告書又は四半期報告書を、法第24条第1項又は法第24条の4の7第1項に定める期間の経過後1か月以内(天災地変等、上場会社の責めに帰すべからざる事由によるものである場合は、3か月以内)に、内閣総理大臣等に提出しなかった場合』(有価証券上場規程601条)
(参考)

1.決算短信様式・記載要領等(平成23228日公表)平成2331日以後最初に終了する事業年度に係る通期決算より適用
2.四半期決算短信様式・作成要領(平成2363日公表、617日一部修正)平成2341日以後開始する事業年度の第1四半期決算より適用
3.有価証券上場規程[東京証券取引所](平成2361日施行)

2011年8月30日火曜日

過年度遡及修正10【会計方針の変更①】

会計方針の変更に関する原則的な取扱いは以下のとおり。
見たまんまなので、条文抜粋にとどめる。なお、原則的な取扱いが実務上不可能な場合について別途記載がある。

『会計方針の変更に関する原則的な取扱いは、次のとおりとする。
(1)会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の場合
会計基準等に特定の経過的な取扱い(適用開始時に遡及適用を行わないことを定めた取扱いなどをいう。以下同じ。)が定められていない場合には、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する。会計基準等に特定の経過的な取扱いが定められている場合には、その経過的な取扱いに従う。
(2)(1)以外の正当な理由による会計方針の変更の場合
新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する。』(基準第6項)
『前項に従って新たな会計方針を遡及適用する場合には、次の処理を行う。
(1)表示期間(当期の財務諸表及びこれに併せて過去の財務諸表が表示されている場合の、その表示期間をいう。以下同じ。)より前の期間に関する遡及適用による累積的影響額は、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映する。
(2)表示する過去の各期間の財務諸表には、当該各期間の影響額を反映する。』(基準第7項)

過年度遡及修正9【会計方針の変更②-原則的な取扱いが実務上不可能な場合】

会計方針の変更については、遡及適用の原則的な取扱いが実務上不可能な場合の取扱いが設けられている。
単純にできるところからできるだけやるというだけ。
表示方法の変更、過去の誤謬の訂正については、記載がない(当たり前だが、会計上の見積りの変更にも記載はない)。
なお、過去の誤謬の訂正については、遡及適用の原則的な取扱いが実務上不可能であるような事態が起こりうることは否定されておらず、あくまで基準上は取扱いが明示されていないだけ(基準第67項)。

(参照条文)
『遡及適用の原則的な取扱いが実務上不可能な場合の取扱いは、次のとおりとする。
(1)当期の期首時点において、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を算定することはできるものの、表示期間のいずれかにおいて、当該期間に与える影響額を算定することが実務上不可能な場合には、遡及適用が実行可能な最も古いい期間(これが当期となる場合もある。)の期首時点で累積的影響額を算定し、当該期首残高から新たな会計方針を適用する。
(2)当期の期首時点において、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を算定することが実務上不可能な場合には、期首以前の実行可能な最も古い日から将来にわたり新たな会計方針を適用する。』(基準第9項)

※ 遡及適用が実務上不可能な場合
『遡及適用が実務上不可能な場合とは、次のような状況が該当する。
(1)過去の情報が収集・保存されておらず、合理的な努力を行っても、遡及適用による影響額を算定できない場合
(2)遡及適用にあたり、過去における経営者の意図について仮定することが必要な場合
(3)遡及適用にあたり、会計上の見積りを必要とするときに、会計事象や取引(以下、「会計事象等」という。)が発生した時点の状況に関する情報について、対象となる過去の財務諸表が作成された時点で入手可能なであったものと、その後判明したものとに、客観的に区別することが時の経過により不可能な場合』(基準第8項)

2011年8月29日月曜日

過年度遡及修正8【過去の誤謬の訂正③-会社法との関係】

遡及基準後の計算書類については、以下の取扱いとなる。
(1)当事業年度1期のみを開示する。
(2)遡及適用した場合には、所定の注記を行う。
(3)過年度確定済み計算書類と過年度遡及による修正再表示計算書類は無関係
誤謬により修正再表示を行い、かつそれが会社法上の重要な誤謬であると判断される場合には、過去に確定したはずの計算書類が未確定扱いとなる。その場合には、過去の計算書類について再度会社法上の手当てを行う必要があるが、それ以外は、あまり気にしなくてもよさそう。

【参照条文】
『表示期間(当期の財務諸表及びこれに併せて過去の財務諸表が表示されている場合の、その表示期間をいう。以下同じ。)より前の期間に関する遡及鉄橋による累積的影響額は、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映する。』(基準第7項(1))

【参考記載】
『会社法の計算書類は、各事業年度において、当期の計算書類のみを開示し、前期以前は開示されません。そのため、誤謬を発見して修正再表示を行う場合は、例外的に前期末の残高に、前期までの会計上の会計上の遡及処理による累積的影響額を加算(または減算)した額を、当期首の残高として用いて当期の会計処理を行うことが許される会計慣行が、新たに成立したととらえられます。過年度遡及基準に従い、過去の誤謬の訂正に該当するものについて修正再表示という会計処理が行われたとしても、確定済みの過年度の計算書類自体を修正したり、手続きまたは内容の瑕疵のために未確定となっている過年度の計算書類を確定したりするような効果は持ちません。従って、このような計算書類を確定させるためには、従来どおり、株主総会の決議など所定の手続きを踏む必要がある点に変わりはありません。』(情報センサーvol.57 February 2011『過年度遡及基準と会社法の計算書類との関係及び影響』)

(参考)
情報センサー vol.57 February 2011 新日本監査法人 『過年度遡及基準と会社法の計算書類との関係及び影響』

過年度遡及修正7【その他①-連結子会社の決算期の変更等】

「決算連結決算子会社が決算期を変更した場合、又は従来3か月以内ズレの決算を取りこんでいたものを仮決算方式に変更した場合は、遡及基準後では、どのように対応するのか?」

(1)決算期の変更等は会計方針の変更に該当しない(遡及適用しない)。
(2)決算期の変更等を行った場合には所定の注記が必要となる。
(3)決算期の変更等を行った場合の剰余金やその他包括利益等の調整については、剰余金で調整する方法・連結損益計算書を通して調整する方法のいずれの方法も認められる。

(条文など)
『なお、連結子会社の決算期が変更されたこと等により、当該連結子会社の事業年度の月数が、連結会計年度の月数と異なる場合にあh、その旨及びその内容を連結財務諸表に注記するものとする。』(連結財規・同ガイドライン3-3なお書き)
『連結子会社の事業年度の末日と連結決算日との間に3か月を超えない差異がある場合において、規則第12条第1項本文の規定による決算を行うか否かに係る変更を行ったときは、次に掲げる事項を記載するものとする。ただし、3に該当する事項は記載しないことができる。
1当該変更を行った旨
2当該変更の理由
3当該変更が連結財務諸表に与えている影響』(連結財規・同ガイドライン13-4)
『連結子会社の事業年度に関する事項の変更については、会計方針の変更に該当しません。したがって、連結子会社による仮決算から正規の決算への変更及び事業年度の変更については、会計方針の変更に該当しません。また、連結子会社の事業年度の月数が連結子会社の月数と異なる場合の処理方法については、剰余金で調整する方法と損益計算書を通して調整する方法のいずれの方法も認められると考えられます。』(『連結財務所要等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案』等に対するパブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方(平成22930日 金融庁))

(参考)経営財務No.3027H23.8.8)『過年度遡及に関する実務論点Q&A

2011年8月26日金曜日

過年度遡及修正6【過去の誤謬の訂正②】

過去の誤謬の訂正については、以下のとおり。
実際行う段になった場合の影響は最も大。論点も多いが、一旦条文抜粋にとどめる。

『過去の財務諸表における誤謬が発見された場合には、次の方法により修正再表示する。
(1)表示期間より前の期間に関する修正再表示による累積的影響額は、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映する。
(2)表示する過去の各期間の財務諸表には、当該各期間の影響額を反映する。』(基準第21項)
『過去の誤謬の修正再表示を行った場合には、次の事項を注記する。
(1)過去の誤謬の内容
(2)表示期間のうち過去の期間について、影響を受ける財務諸表の主な表示科目に対する影響額及び1株当たり情報に対する影響額
(3)表示されている財務諸表のうち、最も古い期間の期首の純資産の額に反映された、表示期間より前の期間に関する修正再表示の累積的影響額』(基準第22項)
『本会計基準の適用により、過去の誤謬を前期損益修正項目として当期の特別損益で修正する従来の取扱いは、比較情報として表示される過去の財務諸表を修正再表示する方法に変更されることになるが、重要性の判断に基づき、過去の財務諸表を修正再表示しない場合は、損益計算書上、その性質により、営業損益又は営業外損益として認識する処理が行われることになると考えられる。』(基準第65項)
『なお、本会計基準は、当期の財務諸表及びこれに併せて比較情報としての過去の財務諸表が表示されている場合を前提に誤謬の取扱いについて定めており、既に公表された財務諸表自体の訂正期間及び訂正方法は、各開示制度の中で対応が図られるものと考えられる。』(基準第65項なお書き)

2011年8月11日木曜日

過年度遡及修正5【表示方法の変更】

表示方法を変更した場合には、財務諸表の組替えを行う。
原則的な取扱いが実務上不可能な場合については、可能な期間から適用する。
また、表示方法の変更を行った場合には、所定の注記を行う。
表示方法の変更については、ほぼ議論なしと思われる。条文のみ列挙。

(条文)
『表示方法は、次のいずれかの場合を除き、毎期継続して適用する。
(1)表示方法を定めた会計基準又は法令等の改正により表示方法の変更を行う場合
(2)会計事象等を財務諸表により適切に反映するために表示方法の変更を行う場合』
(基準第13項)
『財務諸表の表示方法を変更した場合には、原則として表示する過去の財務諸表について、新たな表示方法に従い財務諸表の組替えを行う。』(基準第14項)
『表示する過去の財務諸表のうち、表示方法の変更に関する原則的な取扱いが実務上不可能な場合には、財務諸表の組替えが実行可能な最も古い期間から新たな表示方法を適用する。なお、財務諸表の組替えが実務上不可能な場合とは、第8項に示されたような状況が該当する。』
『表示方法の変更を行った場合には、次の事項を注記する。ただし、(2)~(4)については、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同一である場合には、その旨の記載をもって代えることができる。
(1)財務諸表の組替えの内容
(2)財務諸表の組替えを行った理由
(3)組替えられた過去の財務諸表の主な項目の金額
(4)原則的な取扱いが実務上不可能な場合(前項参照)には、その理由』(基準第16項)

2011年8月10日水曜日

過年度遡及修正4【過去の誤謬の訂正①-訂正報告書制度との関係】

過去の誤謬が発見され、その重要性が高い場合には、その訂正は従来どおり訂正報告書によって行うことが一般的であると考えられる。

過去の誤謬が見つかって、その重要性が高いものとする。
この場合、遡及基準においては、修正再表示を行う必要がある(基準第21項)。
一方、金融商品取引法により、記載すべき重要な事項の変更がある場合やその他公益又は投資者保護のため当該書類の内容を訂正する必要がある場合には、訂正報告書の提出の必要があるものとされており、修正再表示を行ったのみでは、当該規制法の要求は満たされない。
【遡及基準の参考記載】
この点、遡及基準では、『本会計基準は、当期の財務諸表及びこれに併せて比較情報として過去の財務諸表が表示されている場合を前提に誤謬の取扱いについて定めており、既に公表された財務諸表自体の訂正期間及び訂正方法は、各開示制度の中で対応が図られるものと考えられる』(基準第65項なお書き)としており、訂正期間・訂正方法については、各開示制度(この場合、金商法)の定めの中で対応する必要があることが示されている。
【その他参考記載】
また、参考になるのは、新起草方針に基づく改正版】「監査基準委員会報告書第63号『過年度の比較情報-対応数値と比較財務諸表』」の公表についての前書文のなお書き。
(この報告書は、監査人が財務報告を監査する上で、財務諸表に含まれる比較情報について意見表明をするのに十分かつ適切な監査証拠を入手するための監査手続き等について記載したもの)
そこでは、『なお、会計基準上、過去の財務諸表に重要な誤謬があった場合には、修正再表示を行うことになっております。一方、金融商品取引法上は、重要な事項の変更等を発見した場合訂正報告書の提出が求められていることから、一般的には過去の誤謬を比較情報として示される前期数値を修正再表示することにより解消することはできないと考えられます。したがって、本報告書における過去の誤謬の修正再表示に関する要求事項等については、金融商品取引法の監査においては、通常は適用されないことにご留意ください。』としている。
すなわち、監査人においても、「修正再表示に先だって訂正報告書が提出されることを前提としている」ということが読み取れる。

(参考URL)
トーマツe会計情報-訂正報告書
http://www.tohmatsu.com/view/ja_jp/jp/knowledge/ek/glossary/accounting/article/0215ea73cbfef110VgnVCM100000ba42f00aRCRD.htm
新日本有限責任監査法人-解説シリーズ「会計上の変更及び過去の誤謬の訂正に関する会計基準」
http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/commentary/retroactive-adjustment/2010-07-29-02.html

2011年8月1日月曜日

過年度遡及修正3【会計上の見積りの変更の取扱い2】

会計上の見積りの変更の取扱いの補足。


「会計方針の変更」と「会計上の見積りの変更」との区別が困難な場合については、会計上の見積りの変更と同様に取り扱い、遡及適用は行わない。ただし、基準第11項(1)・(2)及び第18項(2)に関する注記が必要。
基準では、両者が区別困難な場合の例示として減価償却方法の変更が挙げられている。また、関連として臨時償却は、廃止された。

会計方針の変更はレトロスペクティブ方式であり、会計上の見積りの変更はプロスペクティブ方式。両者が区別困難な場合は、プロスペクティブ方式。
基準適用後は基本的にどちらかの方式で処理することになるため、キャッチアップ方式は考え方としてなくなった。という風に整理できるだろうか。

以下は条文等のメモ

(1)会計方針の変更との区別が困難な場合
『会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合については、会計上の見積りの変更と同様に取り扱い、遡及適用は行わない。ただし、注記については、第11項(1)・(2)及び前項(2)に関する記載を行う。』(基準第19項)
(2)減価償却方法の変更
『減価償却方法については、これまでどおり会計方針として位置付けることとする一方、減価償却方法の変更は、会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合(第19項参照)に該当するものとし、会計上の見積りの変更と同様に会計処理を行い、その遡及適用は求めないこととした。』(基準第62項)
『ただし、減価償却方法は会計方針であることから、変更にあたって正当な理由が求められることや、米国会計基準において、会計方針の変更によりもたらされる会計上の見積りの変更については、会計方針の変更と同様の内容の注記を要するものとされていることから、本会計基準においても、第11項(1)及び(2)に加え、第18項(2)に関する注記を行うこととした。』(基準第62項ただし書き)
(3)臨時償却の廃止
『臨時償却は、耐用年数との変更等に関する影響額を、その変更期間で一時に認識する方法(以下、「キャッチアップ方式」という。)である。』(基準第57項)
『検討の結果、本会計基準では、国際的な会計基準とのコンバージェンスの観点も踏まえ、臨時償却は廃止し、固定資産の耐用年数の変更等については、当期以降の費用配分に影響させる方法(プロスペクティブ方式)のみを認める取扱いとすることとした。』(基準第57項)

2011年7月20日水曜日

過年度遡及修正2【会計上の見積りの変更の取扱い】

(7/29色消し)
(7/24加筆&誤字訂正あり)
いわゆる原則的な取扱と注意すべき事項についてメモ。

会計上の見積りの変更に関する取り扱いは、原則プロスペクティブ方式であり、将来に向かって修正。
なお、見積差額については、第55項の文面によらず、当該見積時と同じ計上区分・段階損益に計上する(第55項は、計上区分の例示であり、限定列挙でない)。

①『会計上の見積りの変更は、当該変更が変更期間のみに影響する場合には当該変更期間に会計処理を行い、当該変更が将来の期間にも影響する場合には将来にわたり会計処理を行う』(基準第17項)
②『なお、わが国の従来の取扱いでは、企業会計原則注解(注12)において、過年度における引当金過不足修正額などを前期損益修正として特別損益に表示することとされている。』(基準第55項)
③『本会計基準においては、引当額の過不足が計上時の見積り誤りに起因する場合には、過去の誤謬に該当するため、修正再表示を行うこととなる。』(基準第55項)
④『一方、過去の財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき最善の見積りを行った場合には、当期中における状況の変化により会計上の見積りの変更を行ったときの差額、又は実績が確定したときの見積金額との差額は、その変更のあった期、又は実績が確定した期に、その性質により、営業損益又は営業外損益として認識することになる。』(基準第55項)

【memo
上記④の記載により、「過去、特別損失に計上していた会計上の見積り(当時入手可能な情報に基づき最善な見積りを行っている)に、履行差額や見積り誤差が発生した場合は、営業損益又は営業損益に計上しなければならないのか?」という問題が出てきているそうだ。
これについて、先日の経営財務(No.3024 平成23年7月18日)に「前期、震災により特別損失として計上した災害損失引当金の見積と実績の差額はどの段階損益で表示すればよいのか?」という内容の特集記事があった。
それによると、以下①~③のとおり、特別損益にて計上することは否定されないようだ。
以下は、内容の抜粋。
①「第55項の取扱いは、貸倒引当金などについて、毎期最善の見積りがされているためその修正差額は計上的な項目となるはず。55項は、貸倒引当金戻入などの前期損益修正を特別損益で処理する実務がなくなった」ことを示すものであり、
②「引当金の見積差額について、すでに計上した引当金と同じ性質・計上区分で処理することを示すもの」(第55項は例示である)
③「企業会計原則注解注12の特別損益計上要件を満たしており、また、JICPA会長通牒(330日)においても特損計上を認めている臨時性を持った引当金であるため、当期においても、(金額の多寡や案件にはよるが)特別利益等として計上することは否定されない。」
とのことである。
特に②のコメントが参考になりそうだ。

2011年7月14日木曜日

退職給付に関する会計基準(ED)のメモ7(検討状況)

第227回企業会計基準委員会(H23/6/30)における退職給付専門委員会における検討状況のメモ

適用時期について議論されたようだ。
Finalでは、強制適用時期はEDから1年遅れとなる見込み。

①未認識項目の一括負債計上
 強制適用:平成2441日以降開始する事業年度の期末から(ED対1年遅れ)
 早期適用:平成2441日以降開始する事業年度の期首から

②退職給付債務及び勤務費用の計算方法
 強制適用:平成2541日以降開始する事業年度の期首から
      (ただし、当該期首からの適用が困難と認められる会社は
       平成2641日以降開始する事業年度の期首から、注記が条件)
 早期適用:平成2441日以降開始する事業年度の期首から

2011年7月6日水曜日

過年度遡及修正

以下の①~④の条件の場合、前年度の遡及修正仕訳はどのようになるか?
また、④の条件を「前年度の申告の修正等を行わない」とした場合と仕訳に差異があるか?
①前年度の財務諸表において費用の過少計上がある。
②当該費用は税務上損金算入されるものである。
③当該過少計上は、重要な誤謬であり、前年度財務諸表を遡及修正する。
④前年度の申告の修正等を行う。

(処理)
前提:過少計上であった費用額100、税率40%
◆パターン1 「前年度の申告の修正等を行うとした場合」
前年度の法人税・住民税・事業税の金額は、損金算入後の課税所得により計算される。
したがって、前年度財務諸表に適用する仕訳は、
費用100/未払100、法人税等40/未払法人税等

◆パターン2「前年度の申告の修正等を行わないとした場合」
前年度の法人税・住民税・事業税の金額は、従来の課税所得により計算される。
しかしながら、当該過少計上による税務上の所得と会計上の利益の差について、繰延税金負債を認識する必要がある。
したがって、前年度財務諸表に適用する仕訳は
費用100/未払100、法人税等調整額40/繰延税金負債40

パターン1とパターン2でこのような差異が出てくるのではないかと思われるが、裏付けとなる記載を発見することができない。

2011年6月29日水曜日

電子記録債権に係る会計処理

(2011年7月8日追記あり)
電子記録債権の金額的重要性が高まりつつあるため、取扱について整理してみる。

電子記録債権については、以下の実務対応報告を参考に会計処理を行うことになる。
「電子記録債権に係る会計処理及び表示についての実務上の取扱い」(実務対応報告第27号 平成21年4月9日)

(処理メモ)
実務対応報告では、電子記録債権法に基づく債権等を以下①・②に区分し、それぞれの処理について記述している。

【会計処理】

電子記録債権は、手形債権の代替として機能することが想定されており、会計処理上は手形債権に準じて取り扱う。
注意点は、電子記録債権がB/S上手形債権と指名債権が区分される取引かどうかで会計処理が異なること。

(処理)
債権Aについて、電子記録債権法に基づく発生記録がなされた場合、
①債権AがB/S上手形債権が指名債権とは別に区分掲記される取引に係る債権の場合
 「電子記録債権」等の科目に振り替える。
 ただし、金額的重要性が乏しい場合は、「受取手形(支払手形)」に含めて表示する。
 ※ 例えば売掛金や買掛金に係る取引が該当
 
②債権AがB/S上手形債権が指名債権とは別に区分掲記されない取引に係る債権の場合
 科目振替は行わない。
 ※ 例えば、貸付金や借入金に係る取引が該当

(memo)
例えば、現行企業会計上は、
借入金は、手形借入であっても、証書借入であっても、B/S上の表示は「借入金」等として表示する。
一方、買掛金は、手形債務の場合、「支払手形」として表示し、指名債務の場合、「買掛金」として表示する。
電子記録債権についても、この取扱に準じて表示を検討する必要がある。

(2011年7月8日追記)
類似の取引として、一括支払信託等の取引が存在するが、当該取引は、売掛金等の金銭債権を信託財産を拠出して、信託受益権を入手する取引である。
したがって、当該取引については、金融資産の信託や不動産の信託においては、受益者は信託財産を直接保有する場合と同様の会計処理を行うものとしている金融商品会計実務指針第78項及び第100項に従って会計処理を行うこととなる。
つまり、電子記録債権と信託受益権は、取引上似ている部分があるが、会計処理は異なることに留意する必要があると思われる。