2011年8月30日火曜日

過年度遡及修正10【会計方針の変更①】

会計方針の変更に関する原則的な取扱いは以下のとおり。
見たまんまなので、条文抜粋にとどめる。なお、原則的な取扱いが実務上不可能な場合について別途記載がある。

『会計方針の変更に関する原則的な取扱いは、次のとおりとする。
(1)会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の場合
会計基準等に特定の経過的な取扱い(適用開始時に遡及適用を行わないことを定めた取扱いなどをいう。以下同じ。)が定められていない場合には、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する。会計基準等に特定の経過的な取扱いが定められている場合には、その経過的な取扱いに従う。
(2)(1)以外の正当な理由による会計方針の変更の場合
新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する。』(基準第6項)
『前項に従って新たな会計方針を遡及適用する場合には、次の処理を行う。
(1)表示期間(当期の財務諸表及びこれに併せて過去の財務諸表が表示されている場合の、その表示期間をいう。以下同じ。)より前の期間に関する遡及適用による累積的影響額は、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映する。
(2)表示する過去の各期間の財務諸表には、当該各期間の影響額を反映する。』(基準第7項)

過年度遡及修正9【会計方針の変更②-原則的な取扱いが実務上不可能な場合】

会計方針の変更については、遡及適用の原則的な取扱いが実務上不可能な場合の取扱いが設けられている。
単純にできるところからできるだけやるというだけ。
表示方法の変更、過去の誤謬の訂正については、記載がない(当たり前だが、会計上の見積りの変更にも記載はない)。
なお、過去の誤謬の訂正については、遡及適用の原則的な取扱いが実務上不可能であるような事態が起こりうることは否定されておらず、あくまで基準上は取扱いが明示されていないだけ(基準第67項)。

(参照条文)
『遡及適用の原則的な取扱いが実務上不可能な場合の取扱いは、次のとおりとする。
(1)当期の期首時点において、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を算定することはできるものの、表示期間のいずれかにおいて、当該期間に与える影響額を算定することが実務上不可能な場合には、遡及適用が実行可能な最も古いい期間(これが当期となる場合もある。)の期首時点で累積的影響額を算定し、当該期首残高から新たな会計方針を適用する。
(2)当期の期首時点において、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を算定することが実務上不可能な場合には、期首以前の実行可能な最も古い日から将来にわたり新たな会計方針を適用する。』(基準第9項)

※ 遡及適用が実務上不可能な場合
『遡及適用が実務上不可能な場合とは、次のような状況が該当する。
(1)過去の情報が収集・保存されておらず、合理的な努力を行っても、遡及適用による影響額を算定できない場合
(2)遡及適用にあたり、過去における経営者の意図について仮定することが必要な場合
(3)遡及適用にあたり、会計上の見積りを必要とするときに、会計事象や取引(以下、「会計事象等」という。)が発生した時点の状況に関する情報について、対象となる過去の財務諸表が作成された時点で入手可能なであったものと、その後判明したものとに、客観的に区別することが時の経過により不可能な場合』(基準第8項)

2011年8月29日月曜日

過年度遡及修正8【過去の誤謬の訂正③-会社法との関係】

遡及基準後の計算書類については、以下の取扱いとなる。
(1)当事業年度1期のみを開示する。
(2)遡及適用した場合には、所定の注記を行う。
(3)過年度確定済み計算書類と過年度遡及による修正再表示計算書類は無関係
誤謬により修正再表示を行い、かつそれが会社法上の重要な誤謬であると判断される場合には、過去に確定したはずの計算書類が未確定扱いとなる。その場合には、過去の計算書類について再度会社法上の手当てを行う必要があるが、それ以外は、あまり気にしなくてもよさそう。

【参照条文】
『表示期間(当期の財務諸表及びこれに併せて過去の財務諸表が表示されている場合の、その表示期間をいう。以下同じ。)より前の期間に関する遡及鉄橋による累積的影響額は、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映する。』(基準第7項(1))

【参考記載】
『会社法の計算書類は、各事業年度において、当期の計算書類のみを開示し、前期以前は開示されません。そのため、誤謬を発見して修正再表示を行う場合は、例外的に前期末の残高に、前期までの会計上の会計上の遡及処理による累積的影響額を加算(または減算)した額を、当期首の残高として用いて当期の会計処理を行うことが許される会計慣行が、新たに成立したととらえられます。過年度遡及基準に従い、過去の誤謬の訂正に該当するものについて修正再表示という会計処理が行われたとしても、確定済みの過年度の計算書類自体を修正したり、手続きまたは内容の瑕疵のために未確定となっている過年度の計算書類を確定したりするような効果は持ちません。従って、このような計算書類を確定させるためには、従来どおり、株主総会の決議など所定の手続きを踏む必要がある点に変わりはありません。』(情報センサーvol.57 February 2011『過年度遡及基準と会社法の計算書類との関係及び影響』)

(参考)
情報センサー vol.57 February 2011 新日本監査法人 『過年度遡及基準と会社法の計算書類との関係及び影響』

過年度遡及修正7【その他①-連結子会社の決算期の変更等】

「決算連結決算子会社が決算期を変更した場合、又は従来3か月以内ズレの決算を取りこんでいたものを仮決算方式に変更した場合は、遡及基準後では、どのように対応するのか?」

(1)決算期の変更等は会計方針の変更に該当しない(遡及適用しない)。
(2)決算期の変更等を行った場合には所定の注記が必要となる。
(3)決算期の変更等を行った場合の剰余金やその他包括利益等の調整については、剰余金で調整する方法・連結損益計算書を通して調整する方法のいずれの方法も認められる。

(条文など)
『なお、連結子会社の決算期が変更されたこと等により、当該連結子会社の事業年度の月数が、連結会計年度の月数と異なる場合にあh、その旨及びその内容を連結財務諸表に注記するものとする。』(連結財規・同ガイドライン3-3なお書き)
『連結子会社の事業年度の末日と連結決算日との間に3か月を超えない差異がある場合において、規則第12条第1項本文の規定による決算を行うか否かに係る変更を行ったときは、次に掲げる事項を記載するものとする。ただし、3に該当する事項は記載しないことができる。
1当該変更を行った旨
2当該変更の理由
3当該変更が連結財務諸表に与えている影響』(連結財規・同ガイドライン13-4)
『連結子会社の事業年度に関する事項の変更については、会計方針の変更に該当しません。したがって、連結子会社による仮決算から正規の決算への変更及び事業年度の変更については、会計方針の変更に該当しません。また、連結子会社の事業年度の月数が連結子会社の月数と異なる場合の処理方法については、剰余金で調整する方法と損益計算書を通して調整する方法のいずれの方法も認められると考えられます。』(『連結財務所要等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案』等に対するパブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方(平成22930日 金融庁))

(参考)経営財務No.3027H23.8.8)『過年度遡及に関する実務論点Q&A

2011年8月26日金曜日

過年度遡及修正6【過去の誤謬の訂正②】

過去の誤謬の訂正については、以下のとおり。
実際行う段になった場合の影響は最も大。論点も多いが、一旦条文抜粋にとどめる。

『過去の財務諸表における誤謬が発見された場合には、次の方法により修正再表示する。
(1)表示期間より前の期間に関する修正再表示による累積的影響額は、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映する。
(2)表示する過去の各期間の財務諸表には、当該各期間の影響額を反映する。』(基準第21項)
『過去の誤謬の修正再表示を行った場合には、次の事項を注記する。
(1)過去の誤謬の内容
(2)表示期間のうち過去の期間について、影響を受ける財務諸表の主な表示科目に対する影響額及び1株当たり情報に対する影響額
(3)表示されている財務諸表のうち、最も古い期間の期首の純資産の額に反映された、表示期間より前の期間に関する修正再表示の累積的影響額』(基準第22項)
『本会計基準の適用により、過去の誤謬を前期損益修正項目として当期の特別損益で修正する従来の取扱いは、比較情報として表示される過去の財務諸表を修正再表示する方法に変更されることになるが、重要性の判断に基づき、過去の財務諸表を修正再表示しない場合は、損益計算書上、その性質により、営業損益又は営業外損益として認識する処理が行われることになると考えられる。』(基準第65項)
『なお、本会計基準は、当期の財務諸表及びこれに併せて比較情報としての過去の財務諸表が表示されている場合を前提に誤謬の取扱いについて定めており、既に公表された財務諸表自体の訂正期間及び訂正方法は、各開示制度の中で対応が図られるものと考えられる。』(基準第65項なお書き)

2011年8月11日木曜日

過年度遡及修正5【表示方法の変更】

表示方法を変更した場合には、財務諸表の組替えを行う。
原則的な取扱いが実務上不可能な場合については、可能な期間から適用する。
また、表示方法の変更を行った場合には、所定の注記を行う。
表示方法の変更については、ほぼ議論なしと思われる。条文のみ列挙。

(条文)
『表示方法は、次のいずれかの場合を除き、毎期継続して適用する。
(1)表示方法を定めた会計基準又は法令等の改正により表示方法の変更を行う場合
(2)会計事象等を財務諸表により適切に反映するために表示方法の変更を行う場合』
(基準第13項)
『財務諸表の表示方法を変更した場合には、原則として表示する過去の財務諸表について、新たな表示方法に従い財務諸表の組替えを行う。』(基準第14項)
『表示する過去の財務諸表のうち、表示方法の変更に関する原則的な取扱いが実務上不可能な場合には、財務諸表の組替えが実行可能な最も古い期間から新たな表示方法を適用する。なお、財務諸表の組替えが実務上不可能な場合とは、第8項に示されたような状況が該当する。』
『表示方法の変更を行った場合には、次の事項を注記する。ただし、(2)~(4)については、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同一である場合には、その旨の記載をもって代えることができる。
(1)財務諸表の組替えの内容
(2)財務諸表の組替えを行った理由
(3)組替えられた過去の財務諸表の主な項目の金額
(4)原則的な取扱いが実務上不可能な場合(前項参照)には、その理由』(基準第16項)

2011年8月10日水曜日

過年度遡及修正4【過去の誤謬の訂正①-訂正報告書制度との関係】

過去の誤謬が発見され、その重要性が高い場合には、その訂正は従来どおり訂正報告書によって行うことが一般的であると考えられる。

過去の誤謬が見つかって、その重要性が高いものとする。
この場合、遡及基準においては、修正再表示を行う必要がある(基準第21項)。
一方、金融商品取引法により、記載すべき重要な事項の変更がある場合やその他公益又は投資者保護のため当該書類の内容を訂正する必要がある場合には、訂正報告書の提出の必要があるものとされており、修正再表示を行ったのみでは、当該規制法の要求は満たされない。
【遡及基準の参考記載】
この点、遡及基準では、『本会計基準は、当期の財務諸表及びこれに併せて比較情報として過去の財務諸表が表示されている場合を前提に誤謬の取扱いについて定めており、既に公表された財務諸表自体の訂正期間及び訂正方法は、各開示制度の中で対応が図られるものと考えられる』(基準第65項なお書き)としており、訂正期間・訂正方法については、各開示制度(この場合、金商法)の定めの中で対応する必要があることが示されている。
【その他参考記載】
また、参考になるのは、新起草方針に基づく改正版】「監査基準委員会報告書第63号『過年度の比較情報-対応数値と比較財務諸表』」の公表についての前書文のなお書き。
(この報告書は、監査人が財務報告を監査する上で、財務諸表に含まれる比較情報について意見表明をするのに十分かつ適切な監査証拠を入手するための監査手続き等について記載したもの)
そこでは、『なお、会計基準上、過去の財務諸表に重要な誤謬があった場合には、修正再表示を行うことになっております。一方、金融商品取引法上は、重要な事項の変更等を発見した場合訂正報告書の提出が求められていることから、一般的には過去の誤謬を比較情報として示される前期数値を修正再表示することにより解消することはできないと考えられます。したがって、本報告書における過去の誤謬の修正再表示に関する要求事項等については、金融商品取引法の監査においては、通常は適用されないことにご留意ください。』としている。
すなわち、監査人においても、「修正再表示に先だって訂正報告書が提出されることを前提としている」ということが読み取れる。

(参考URL)
トーマツe会計情報-訂正報告書
http://www.tohmatsu.com/view/ja_jp/jp/knowledge/ek/glossary/accounting/article/0215ea73cbfef110VgnVCM100000ba42f00aRCRD.htm
新日本有限責任監査法人-解説シリーズ「会計上の変更及び過去の誤謬の訂正に関する会計基準」
http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/commentary/retroactive-adjustment/2010-07-29-02.html

2011年8月1日月曜日

過年度遡及修正3【会計上の見積りの変更の取扱い2】

会計上の見積りの変更の取扱いの補足。


「会計方針の変更」と「会計上の見積りの変更」との区別が困難な場合については、会計上の見積りの変更と同様に取り扱い、遡及適用は行わない。ただし、基準第11項(1)・(2)及び第18項(2)に関する注記が必要。
基準では、両者が区別困難な場合の例示として減価償却方法の変更が挙げられている。また、関連として臨時償却は、廃止された。

会計方針の変更はレトロスペクティブ方式であり、会計上の見積りの変更はプロスペクティブ方式。両者が区別困難な場合は、プロスペクティブ方式。
基準適用後は基本的にどちらかの方式で処理することになるため、キャッチアップ方式は考え方としてなくなった。という風に整理できるだろうか。

以下は条文等のメモ

(1)会計方針の変更との区別が困難な場合
『会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合については、会計上の見積りの変更と同様に取り扱い、遡及適用は行わない。ただし、注記については、第11項(1)・(2)及び前項(2)に関する記載を行う。』(基準第19項)
(2)減価償却方法の変更
『減価償却方法については、これまでどおり会計方針として位置付けることとする一方、減価償却方法の変更は、会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合(第19項参照)に該当するものとし、会計上の見積りの変更と同様に会計処理を行い、その遡及適用は求めないこととした。』(基準第62項)
『ただし、減価償却方法は会計方針であることから、変更にあたって正当な理由が求められることや、米国会計基準において、会計方針の変更によりもたらされる会計上の見積りの変更については、会計方針の変更と同様の内容の注記を要するものとされていることから、本会計基準においても、第11項(1)及び(2)に加え、第18項(2)に関する注記を行うこととした。』(基準第62項ただし書き)
(3)臨時償却の廃止
『臨時償却は、耐用年数との変更等に関する影響額を、その変更期間で一時に認識する方法(以下、「キャッチアップ方式」という。)である。』(基準第57項)
『検討の結果、本会計基準では、国際的な会計基準とのコンバージェンスの観点も踏まえ、臨時償却は廃止し、固定資産の耐用年数の変更等については、当期以降の費用配分に影響させる方法(プロスペクティブ方式)のみを認める取扱いとすることとした。』(基準第57項)