2011年10月4日火曜日

消費税改正対応1-消費税関連科目の表示方法

消費税法改正対応(平成2441日以後に開始する課税期間から)のため、消費税関係の取扱いを整理しておく。
さしあたり、『消費税の会計処理について(中間報告)』(日本公認会計士協会 消費税の会計処理に関するプロジェクトチーム 平成元年1月18日)の中で個人的に大事だと思ったところの転記。


◆控除対象外消費税の性格
資産に係る控除対象消費税額の性格については、最終的な消費について負担したものと考え「当該資産の付随費用として取得原価を構成するもの」とみる説と控除できなくなった仮払金であるとの考え方等から「発生事業年度の期間費用」とみる説があるが、いずれがより適当であるかは、消費税法適用後の経過等を踏まえ、今後更に検討すべきものと考える。
◆消費前関連科目の表示方法
1.未払消費税
未払消費税は、「未払消費税」等その内容を示す適当な名称を付した科目で貸借対照表に表示する。ただし、その金額が重要でない場合は、未払金等に含めて表示することができる。
2.未収消費税
未収消費税は、「未収消費税」等その内容を示す適当な名称を付した科目で貸借対照表に表示する。ただし、その金額が重要でない場合は、未収金等に含めて表示することができる。
3.租税公課(消費税)
税抜方式の場合における控除対象外消費税又は税込方式の場合における納付すべき消費税額は、販売費及び一般管理費の「租税公課」に表示し、その金額が重要な場合は「消費税」等その内容を示す適当な名称を付した科目で表示する。
(注)販売費及び一般管理費として表示することが適当でない場合には、その金額を売上原価、営業外費用等に表示することができる。
4.雑収入(還付消費税)
税込方式における還付された消費税は営業外収益の「雑収入」等に表示し、その金額が重要な場合は「還付消費税」等その内容を示す適当な科目を付した科目で表示する。
(注)営業外収益の「雑収入」等として表示することが適当でない場合には、その金額を売上原価、販売費及び一般管理費から控除して表示することができる。
5.長期前払消費税
長期前払消費税は、「長期前払消費税」等の内容を示す適当な名称を付した科目で貸借対照表に表示する。ただし、その金額が重要でない場合は、投資その他の資産の「その他」に含めて表示することができる。

2011年9月20日火曜日

循環取引等不適切な会計処理への監査上の対応について

平成23年9月15日、日本公認会計士協会から『循環取引等不適切な会計処理への監査上の対応等について』(会長通牒平成23年第3号)と題する会長通牒が発出された。
以下はメモ。

【1.構成などのメモ】
全9ページ・5セクション建て。
題名からも当然であるが、文章のおよそ7割(大体6.5p/9p)が「4セクション目の監査手続実施上の留意事項」に充てられている。
4セクション目の中でも(1)リスクの評価、(3)残高等の確認は、それぞれ1p2pが割かれており、監査人にとって重要だというだけでなく、事業会社としても、ここを重点的に実施することが循環取引等の防止に効果的であり、また、経理部門としても説明責任を果たすことになるものと思われる。

【2.内容メモ】
以下は、印象に残った箇所のメモ書き

1.循環取引の特徴
・取引先は実在することが多い
・資金決済は実際に行われることが多い
・会計記録や証憑の偽造又は在庫等の保有資産の偽装は、徹底して行われることが多い

4.監査手続実施上の留意事項(8)異常性分析
回転分析や比率分析は、前期との比較等の短期間の分析では、それほど異常性が顕著には出ていない場合でも、中期的な趨勢を分析した場合には、異常性を認識できることもあるので、その点にも留意する。

4.監査手続実施上の留意事項(9)異常点への対応手続
① 会計システムと業務システムとの金額の整合性の確認
② 異常な会計伝票の有無の確認

2011年9月15日木曜日

四半期報告書の簡素化に関する注意点

先日、仰星監査法人の竹村純也氏のブログに「第2四半期では省略規定の復活に気をつけろ!」と題したエントリーがあった。

非常に参考になったので、以下で内容要約メモ。

【以下、内容要約メモ】
四半期報告書の簡素化についての注意点。
「第1四半期・第3四半期」と「第2四半期」では、省略規定が異なるため、直前四半期の四半期報告書を確認しながら当該四半期の四半期報告書を作るという実務が成立しなくなるという点。
特に第1→第2の場合は、必要な事項にモレが生じかねないため、注意が必要である。
また、四半期全体(第1・第2・第3)を通した当社(グループ)の省略等の方針を明らかにしておかないと第1と第3で省略の内容が違ったり、何を省略してよいか分からなくなったりしかねないという点。
これをうまく解決するためには、
①そもそもどのような省略規定があり、
②当社(グループ)は、どのような方針でそれを適用しているのかについて
③第1~第3四半期を通じて管理する
ような仕組みを持つことが必要である。

なお、竹村氏は、①~③を満たす資料(一覧表)を無料で提供しており、竹村氏のブログから仰星監査法人のHP経由でダウンロードすることができる(登録要)。
【参考】
P.S.バンブーブログ「第2四半期では省略規定の復活に気をつけろ!」
http://bambootakemura.blog.fc2.com/blog-entry-65.html

2011年9月1日木曜日

決算短信・四半期短信の開示時期

四半期短信・決算短信の開示時期等について再整理。

1.開示時期
(1)四半期短信:四半期決算の内容が定まった場合直ちに。
         ただし、四半期報告書の提出までには行うことが必要。
(2)決算短信:遅くとも期末後45日以内が適当、30日以内が望ましい。
        なお、期末後50日を超える場合は、所定の開示が必要。

2.集中緩和要請
(1)毎月末、毎週末、決算期末後45日目を避ける
(2)午後3時台のピークタイムを避け、午前中などの決算発表を。
   特に午後3時は最も集中するため、発表時間を1分以上前後。
なお、東証が定めている分間当たり上限件数を超えた場合には、別の日時を指定するようエラーメッセージが出る。

3.その他
有価証券報告書及び四半期報告書が法定期限までに提出されない又は提出できる見込みがない場合には、法定期限翌日に監理銘柄(確認中)に指定され、法定期限経過後1カ月以内に提出されない場合には、当該銘柄の上場が廃止される。

(参照記載)
『2人以上の公認会計士又は監査法人による監査証明府令第3条第1項の監査報告書又は四半期レビュー報告書(公認会計士又は監査法人に相当する者による監査証明に相当する証明に係る監査報告書又は四半期レビュー報告書を含む。)を添付した有価証券報告書又は四半期報告書を、法第24条第1項又は法第24条の4の7第1項に定める期間の経過後1か月以内(天災地変等、上場会社の責めに帰すべからざる事由によるものである場合は、3か月以内)に、内閣総理大臣等に提出しなかった場合』(有価証券上場規程601条)
(参考)

1.決算短信様式・記載要領等(平成23228日公表)平成2331日以後最初に終了する事業年度に係る通期決算より適用
2.四半期決算短信様式・作成要領(平成2363日公表、617日一部修正)平成2341日以後開始する事業年度の第1四半期決算より適用
3.有価証券上場規程[東京証券取引所](平成2361日施行)

2011年8月30日火曜日

過年度遡及修正10【会計方針の変更①】

会計方針の変更に関する原則的な取扱いは以下のとおり。
見たまんまなので、条文抜粋にとどめる。なお、原則的な取扱いが実務上不可能な場合について別途記載がある。

『会計方針の変更に関する原則的な取扱いは、次のとおりとする。
(1)会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の場合
会計基準等に特定の経過的な取扱い(適用開始時に遡及適用を行わないことを定めた取扱いなどをいう。以下同じ。)が定められていない場合には、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する。会計基準等に特定の経過的な取扱いが定められている場合には、その経過的な取扱いに従う。
(2)(1)以外の正当な理由による会計方針の変更の場合
新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する。』(基準第6項)
『前項に従って新たな会計方針を遡及適用する場合には、次の処理を行う。
(1)表示期間(当期の財務諸表及びこれに併せて過去の財務諸表が表示されている場合の、その表示期間をいう。以下同じ。)より前の期間に関する遡及適用による累積的影響額は、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映する。
(2)表示する過去の各期間の財務諸表には、当該各期間の影響額を反映する。』(基準第7項)

過年度遡及修正9【会計方針の変更②-原則的な取扱いが実務上不可能な場合】

会計方針の変更については、遡及適用の原則的な取扱いが実務上不可能な場合の取扱いが設けられている。
単純にできるところからできるだけやるというだけ。
表示方法の変更、過去の誤謬の訂正については、記載がない(当たり前だが、会計上の見積りの変更にも記載はない)。
なお、過去の誤謬の訂正については、遡及適用の原則的な取扱いが実務上不可能であるような事態が起こりうることは否定されておらず、あくまで基準上は取扱いが明示されていないだけ(基準第67項)。

(参照条文)
『遡及適用の原則的な取扱いが実務上不可能な場合の取扱いは、次のとおりとする。
(1)当期の期首時点において、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を算定することはできるものの、表示期間のいずれかにおいて、当該期間に与える影響額を算定することが実務上不可能な場合には、遡及適用が実行可能な最も古いい期間(これが当期となる場合もある。)の期首時点で累積的影響額を算定し、当該期首残高から新たな会計方針を適用する。
(2)当期の期首時点において、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を算定することが実務上不可能な場合には、期首以前の実行可能な最も古い日から将来にわたり新たな会計方針を適用する。』(基準第9項)

※ 遡及適用が実務上不可能な場合
『遡及適用が実務上不可能な場合とは、次のような状況が該当する。
(1)過去の情報が収集・保存されておらず、合理的な努力を行っても、遡及適用による影響額を算定できない場合
(2)遡及適用にあたり、過去における経営者の意図について仮定することが必要な場合
(3)遡及適用にあたり、会計上の見積りを必要とするときに、会計事象や取引(以下、「会計事象等」という。)が発生した時点の状況に関する情報について、対象となる過去の財務諸表が作成された時点で入手可能なであったものと、その後判明したものとに、客観的に区別することが時の経過により不可能な場合』(基準第8項)

2011年8月29日月曜日

過年度遡及修正8【過去の誤謬の訂正③-会社法との関係】

遡及基準後の計算書類については、以下の取扱いとなる。
(1)当事業年度1期のみを開示する。
(2)遡及適用した場合には、所定の注記を行う。
(3)過年度確定済み計算書類と過年度遡及による修正再表示計算書類は無関係
誤謬により修正再表示を行い、かつそれが会社法上の重要な誤謬であると判断される場合には、過去に確定したはずの計算書類が未確定扱いとなる。その場合には、過去の計算書類について再度会社法上の手当てを行う必要があるが、それ以外は、あまり気にしなくてもよさそう。

【参照条文】
『表示期間(当期の財務諸表及びこれに併せて過去の財務諸表が表示されている場合の、その表示期間をいう。以下同じ。)より前の期間に関する遡及鉄橋による累積的影響額は、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映する。』(基準第7項(1))

【参考記載】
『会社法の計算書類は、各事業年度において、当期の計算書類のみを開示し、前期以前は開示されません。そのため、誤謬を発見して修正再表示を行う場合は、例外的に前期末の残高に、前期までの会計上の会計上の遡及処理による累積的影響額を加算(または減算)した額を、当期首の残高として用いて当期の会計処理を行うことが許される会計慣行が、新たに成立したととらえられます。過年度遡及基準に従い、過去の誤謬の訂正に該当するものについて修正再表示という会計処理が行われたとしても、確定済みの過年度の計算書類自体を修正したり、手続きまたは内容の瑕疵のために未確定となっている過年度の計算書類を確定したりするような効果は持ちません。従って、このような計算書類を確定させるためには、従来どおり、株主総会の決議など所定の手続きを踏む必要がある点に変わりはありません。』(情報センサーvol.57 February 2011『過年度遡及基準と会社法の計算書類との関係及び影響』)

(参考)
情報センサー vol.57 February 2011 新日本監査法人 『過年度遡及基準と会社法の計算書類との関係及び影響』